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次期学習指導要領から考える読書の力

AI時代にこそ「文学」と「心のゆとり」を。

最近、次の学習指導要領の改訂案がニュースで話題になっていますね。ネットや新聞などで目にした方も多いと思います。

日本経済新聞に主なポイントがまとまっていました。このようになります。

【学習指導要領改訂案のポイント】

  • 小学校の「総合的な探究の時間」に情報の領域を追加

  • 中学校に新しい教科「情報・技術科」をつくる

  • 高校の「情報Ⅰ・Ⅱ」の内容を増やし、AIも学習に活用する

  • 小中学校で授業のコマ数を調整できる制度を作る

  • ギフテッドや不登校の生徒に向けた個別のカリキュラムを用意する

  • 高校の国語で「文学」の履修を促す

  • 学習態度の評価方法を変える

今、世間で一番注目されているのは「情報教育」と「授業のコマ数調整」のところかもしれません。「情報を増やす分、他の教科の時間が減るのでは?」という声もよく聞きます。

私の過去の記事でも、情報教育のことや、AIをどう教育に取り入れるかについては書いてきました。これからの時代、情報やテクノロジーを使いこなす力は絶対に必要です。ですが、今回私がこの記事で一番注目したいのは、ポイントの最後にある「高校国語で『文学』の履修を促す」というところなんです。

【AIが苦手な領域の能力を上げる】

私は普段から公私ともにAIを使っています。多くの情報から必要なものをまとめたり、文章を作ったりするのは、本当にAIは得意です。イメージを具現化する便利な道具として、もう手放せません。

でも、使い込めば使い込むほど、「AIが苦手な事」もはっきりわかってきました。それはよく言われる事でもありますが、実際に使っていて「人の心」や「複雑な感情」を本当に理解して、寄り添うことは足りない部分です。

人が社会で生きていくには、相手の気持ちを想像したり、お互いを思いやったりする「心の教育」が、これからもっと大事になってくると思っています。前の教育改革では、契約書や実用的な文章を正確に読み取る力が注目されました。もちろんそれも大事ですが、そういった情報処理のようなことは、これからはAIがかなり手伝ってくれます。

だからこそ今、文学を読む意味があると思うんです。

私は昔から推理小説や歴史小説を読むのが大好きなのですが、読書って本当にいいものです。読みだすと、睡眠を削ってまで読んでしまうのでほどほどにペースをコントロールしていますが、本当に読書は素晴らしいですよね。また、日本には各地域に図書館という素晴らしいシステムがあって、誰でも気軽にたくさんの書籍・文学作品に触れることができます。

推理小説を読んでいると、自分が登場人物になったような気分でその世界に入り込めます。「どうしてこんな事件が起きたんだろう」「この密室のトリックはどうなっているんだ」と、頭の中で色々な場面を思い浮かべながら謎を解いていく。この「場面を頭の中で描く力」が、そのまま「人の気持ちや状況を想像する力」を育てることにつながっていると感じます。歴史小説ではタイムスリップしたような感覚になるような事もしばしば、、、

それに、時間をかけて1つの物語をじっくり読む時間は、今の子供たちにすごく必要な気がしています。

最近は、「2時間の映画を集中して見られない子供が増えている」という話をよく聞きます。動画も早送りで見たり、短いものばかり見たりする時代です。でも、急いで答えを出すだけでなく、本を開いてゆっくり文字を追いかけるような、「心にゆとりを持てる時間」を生活の中に作ってほしいなと思います。

AIが当たり前になって、情報教育が進む時代だからこそ、逆に「人間らしさ」を育てる時間が大切になります。便利になればなるほど、文学を通して人の心や感情を学ぶことの価値は上がっていくはずです。

今回の改訂案に「文学の履修を促す」という方針が入ったことは、これからの社会を生きる子供たちが、人間として成長していくためにすごく意味のあることだと感じています。私はこの方向に大賛成です。

萩原 達也(はぎわら たつや)

プロ野球審判員という極めて異色のキャリアから、教育業界最大手Benesse(ベネッセ)ホールディングスグループ企業へ。
厳格なジャッジが求められる現場から、日本の教育を牽引する巨大組織での実務へと身を転じた経験から、教育業界における広範な知見と深い洞察を培う。現在はIT企業に籍を置き、テクノロジーを軸とした教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に従事。
現場で磨いた独自の視点と、Benesseで得た教育の真髄、そしてITによる変革力を掛け合わせ、固定観念にとらわれない「教育界のアップデート」を提言する。