MichibiQ

「教師の成長を支えるスキル論」シリーズ

第14回【理論】 
「授業者スキル 実践編Ⅰ」の概要2
~授業者スキルの「教科書」を目指して~

おかげさまで「授業者スキル論Ⅰ_実践編」は10/2付で発売できました。AmazonのKindle本として端末で読んでいただくことも可能ですし、PODとして紙の本を注文していただくことも可能です。  


また、思いついて、《「担任スキル論Ⅰ」を2026/10/31まで読めます》のコーナーを設置しました。以下のURLからしばらくの間「試し読み」をしていただけますし、ご質問も受け付けます。試し読みの上でご購入いただけると有り難いです。よろしくお願いします。

「試し読み」はこちらから↓↓↓
https://drive.google.com/drive/folders/19NR0FFbDBhWMNjjOsAr1M5SFD4uHHapL

発刊を記念し、この本の概要を解説しています。拙著の読み方のヒントにしてください。前号(第13回)と本号(第14回)の目次を以下のように設定しました。

★前号(第13回)の内容
〈1授業がうまくいかないのは、あなたのせいではなく「技(スキル)論がないから」です〉〈2教師の世界(授業者スキル・担任スキル)の世界には、なぜ「素振り」がないのか?〉〈3授業の質を支えるのは「技の質(技の創り方)」と「技の使い方(変化のさせ方)」です〉
〈4技の変化の多さはさほど重要ではありません。質の高い授業なら生徒は飽きません〉

前回の記事はこちら↓↓

https://michibiq.com/posts/bpTnjUTg

★本号(第14回)の内容

〈5 武道・スポーツに比べると「授業者スキル」は身に付けやすいが、落とし穴もある〉

〈6他校種・他教科の授業見学・意見交換は、なぜ効果が大きいのか?〉

〈7教室の後ろからより、廊下から見学する方が学びが大きいのはなぜか?〉

〈8本当に効果があるのか?「効果測定」と「実証研究」のお誘い〉

 

5 武道・スポーツに比べると「授業者スキル」は身に付けやすいが、落とし穴もある。

私のユニークな発想は「授業が上手いかどうか」を左右する原因は「武道やスポーツ」と同じように「技(スキル)」であるという視点に立つことです。この視点に立つと「成績がグングン上がる授業」と「生徒が集中しない、寝る生徒が多い、成績が上がらない授業」の違いはとても簡単に明確になります。


例えば、「教師が始業チャイムに遅れて入室する授業」「説明時間がだらだらと続く授業」では、生徒の集中力は低く、成績もなかなか向上しません。この視点で見ることに慣れてきた私は、冒頭の2-3分間を見ただけで、「たぶん成績は上がっていないだろうな」と推測できるようになってきました。

そこで「始業チャイム前に入室する(A1)」などの「Aエンゲージメント・スキル」を設定しました。この効果はとても大きいことを示すエピソードを1つ紹介します。ある学校で、新任の英語の女性教師=Bさんの授業を見て欲しいと校長先生から依頼されました。「一生懸命なのはわかるのだけど、生徒たちの反応は悪いし、成績も良くない。何が悪いかわからない。少し見てください」という内容です。


早速見学。授業の展開の仕方、説明の仕方、板書の内容等々は何も問題を感じません。生徒たちも寝ることもなく、指示通りに動いています。「なぜ、この授業の評判が悪いのだろう?」と感じたほどです。20分間ほどしてから気が付きました。先生にほとんど笑顔がないことです。ここかな?と感じたものの、それほど自信はありませんでした。

しかし、他にアドバイスすべきことがなかったので、終了後にそのことだけをアドバイスしました。「説明の仕方、板書の方法、机間巡視等々、とても良いと思います。ただ、1つ気になったのが〈笑顔がないこと〉です。全体に向かって説明する時も、生徒を指名して答えるのを見ている時も、それが正解だった時はなおのこと、〈生徒の顔を見て、目を合わせて、にこり〉としませんか?英語の授業はコミュニケーションを教えることてもありますしね」。それだけをアドバイスして終わりました。


3か月後、再び訪問。校長室に入るや否や以下の話になりました。「いやー、小林さんあのBさんが、あのあと大化けしました。授業を受けている生徒たちの反応も見違えるほど良くなりました。成績も上がりました。授業中だけでなく、廊下ですれ違ったときも、職員室にいる時も、いつもニコニコしてくれるようになりました。おかげで私もとても声を掛けやすくなりました。本当にありがとうございます」。私も驚きましたが、基本スキルの1つが欠けているだけでも大きな違いが生じることを実感した体験でした。

ここでもう1つお伝えしたいことは、「笑顔が少ない先生」が「笑顔を増やす」のは〈簡単!〉ということです。「楽しいかどうかではなく、スキルとして笑顔を作りましょう」は説得力があったようです。これが「授業者スキル」の大きな特徴でありメリットです。


その中身は「授業者スキル」の実体は「単なる社会人スキル」であるということです。「授業者スキル」は時速160キロメートルのボールを投げるというような、「特別な才能に恵まれた人が猛練習をして獲得する技術」ではないのです。誰にでもできる社会人スキルです。

このことが弱みになることもあります。それは「熟達したベテランの技(スキル)は見えにくい」ということです。この詳細はこの連載の第3回「技の透明化現象(二重のパラドックス)」と題して詳述しました。以下のフォルダーに格納してありますので、お読みください。https://drive.google.com/drive/folders/1gljZkOmEMLs8l_gIOgyiGyPeGGWtRRr7

 

6 他校種・他教科の授業見学・意見交換は、なぜ効果が大きいのか?

「自分の教科以外の授業見学」の方が学びが大きいことがあります。理由は、自分の専門教科やそれに近い教科・科目の授業を見ると、「コンテンツ(教科内容)」が気になってしまい、「プロセス(授業の進め方、パターンやスキル)」への注意が散漫になりがちだからです。


このことを十分に理解しているつもりの私でも、自分の専門の「物理授業」を見ていると、「専門用語の説明がちょっと違う」「図の書き方が私と少し違う」という事にひっかかると、授業プロセスへの意識が薄くなってしまいます。そうならないように意識している私でも、そうなのですから、大半の皆さんは自分の教科・科目に近い授業を見学する時には「コンテンツに引き込まれてしまう」ことが多いと思います。

そこでお勧めは「自分の教科以外の授業を見学すること」です。そうすると他教科のコンテンツには詳しくないので、あまり気になりません。その結果、先生の説明の仕方・進め方や、生徒の反応の変化などの「プロセス」に着目しやすいのです。そして「プロセス」の注目しつつ、「基本スキル・基本パターン」がどのように使われているかに着目すると、「このスキルがこんなに効果的なんだ」と理解できたら、すぐに自分の授業にも取り入れられるということが起きます。ぜひぜひ、お試しください。

 

7 教室の後ろからより、廊下から見学する方が学びが大きいのはなぜか?

一般的には「授業見学」は教室の中に入って行われます。しかし、実は「廊下から見学する方が学びが大きい」のです。ぜひやってみて下さい。その理由を説明します。


理由➀生徒への影響が少ない。

授業の邪魔をせず、生徒たちに影響を与えずに普段の様子を見学できます。

理由➁全体像が見える。

生徒たちが元気。眠そう。下向いている生徒が多い‥などをひと目で理解できます。

理由➂生徒の本当の姿が見えます。

廊下の教室の後ろ側から見ると生徒に見えません。生徒の普段の様子が見えます。先生に隠れて漫画を見ていたり、PCで関係ない画面や動画を視ている様子も把握できます。

理由➃教室前方ドアの窓の外は特等席。

教師の前のドアの「覗き窓」から見ます。この位置は一部の生徒からは見えますが、大半の生徒からは見えません。位置を調整すると授業者にも見えません。特等席です。また、この位置は先生の声も良く聞こえます。説明の方法等も知ることができます。更に生徒の様子も良く見えます。寝ている生徒も数えられます。

理由➄複数教室を比較できる。

慣れると、3~4クラスを廊下をウロウロしながら観察・分析できます。移動する方向によって、教卓側を見たり、生徒側を見たりできます。授業開始時、中盤、終了時‥など同じタイミングで、それぞれの授業の進度を見比べることもできます。

私はこの方法で1コマに3クラスを見学し、終了後に3人の先生たちにアドバイスをすることもありました。この方法は授業者にとっても学びの大きいものになります。自分の授業との比較ができるからです。空き時間にやってみて下さい。

 

8 本当に効果があるのか?「効果測定」と「実証研究」のお誘い

かなり以前に思い付きの調査をしました。先生たちに「授業者スキル」を「意識して1週間実践してもらい」、効果を測定しました。実施率・意識率はどの項目も90%以上という高実施率でした。

つまり「実行は簡単」ということです。(図1)

同時に「先生たちの意識の変化・気づき」を尋ねました(図2左)。

すると、生徒たちに様々な変化が現れていました。「生徒たちが早く席に着くようになった」「居眠りが減った」「質問が増えた」等です。

ここで気を付けたいのは、「この実験を実施することは生徒たちにはアナウンスしていない」ということです。先生たちが「チャイム前に入室する」などを実施したところ、その変化を生徒たちは何となく感じて、変化したということです。ここは重要なポイントです。

更に「先生たち同士の関係性の変化」を尋ねています。(図2右)


すると「普段あまり話をしない先生たちと話した」などのコメントが出てきます。これは「授業者スキル」を意識することで、「同じことを意識する仲間」という感覚が浮上してきたと理解できます。チームビルディングができるという効果も期待できそうです。

もし、この調査に興味を持たれたら、小林にお知らせください。Googleフォームを差し上げます。お返しに、実践結果を教えていただければありがたいです。

 

以上、「授業者スキル論Ⅰ」を読んで、より深く理解していただくためのヒントを書きました。これらを土台に読んでいただき、質問やご意見を寄せていただけると大変うれしいです。よろしくお願いします。

【特別開催】授業改善・「深い学びの実装」に悩む先生へ

10/30(金)20:00〜 小林昭文先生 オンライン無料相談会

「日々の授業改善」から「新指導要領への対応」まで、直接質問・壁打ちできる場です。参加希望の方は、下記MichibiQ公式XのDMへ「参加希望」とお気軽にお送りください。(カメラOFF・耳だけ参加も歓迎)

感想・質問は非公開のX(DM)から。➡MichibiQ公式X

小林先生のメルマガ登録はこちら⇒https://mail.os7.biz/add/5XDr

メルマガバックナンバーはこちら⇒https://mail.os7.biz/b/5XDr

Amazonでご購入いただけます。⇒「授業者スキル論Ⅰ_実践編」

小林昭文(こばやし あきふみ)

埼玉大学理工学部物理学科卒業。空手のプロとして修行したのち、埼玉県公立高校理科(教諭)として25年間勤務。
定年退職後、産業能率大学経営学部教授(クリティカルシンキング、アクションラーニング(質問会議)等の授業を担当)。
現在は㈱AL&AL研究所代表。
著書「アクティブラーニング入門(小林昭文著/産業能率大学出版部)」他多数。
NHKの教育番組にゲストとして出演経験を持ち、さまざまな学校への指導助言を行う教育界の泰斗の一人