小林昭文先生連載「教師の成長を支えるスキル論」
第1回 「主体的・対話的で深い学びを実装する〈授業者スキル〉」
〈なぜ、授業がうまくいかないのか〉
「生徒が寝てしまう」
「話を聞いてくれない」
「研究授業が怖い」
「授業改善の研修を受けても、明日から何を変えればいいのかわからない」
私は25年間の高校教員生活で、こうした悩みを抱えた同僚を数えきれないほど見てきました。そして離職していった仲間もいます。その多くが、「授業への自信喪失」でした。
しかし、私は確信しています。これは「先生たちの能力不足・素質不足、或いは努力不足」ではありません。教師育成方法に〈スキル論〉が欠けているのです。
〈私自身が直面した「授業の壁」〉
定年直前、埼玉県立越ケ谷高校に赴任した私は、学校が抱えている課題に直面しました。
「物理選択者の激減」
「生徒の成績低下」
「理系進学者の減少」
「実験器具の不足」
そして私にとっては「初めての65分授業」、更に「実験用テーブルしかない実験室のみでの授業」。
この課題を解決するために「何年かけてもいいよ」と言ってくれる管理職の言葉を、私は受け入れられませんでした。
『生徒を実験台にするわけにはいかない』と思ったからです。
そして、初年度から成果を出すために授業の構造を徹底的に組み替えました。
その概要は以下です。
Ⅰ「15分間の説明(pptとプロジェクター、板書・ノートなし)」
当時、毎時間pptとプロジェクターを使っていたのは校内で私だけでした。
Ⅱ「35分間の〈おしゃべり・立ち歩き自由〉の問題演習」
Ⅲ「15分間で確認テスト・相互採点・リフレクションカード記入」
全員が満点を取り、にこにこして授業が終了します。
この授業は生徒に大好評となり、十数年ぶりに物理選択者が増えました。
更に「居眠り皆無」「成績向上」「赤点消失」等々の成果を上げました。
更に「宿題・補習なし」「夏休み・冬休みの特別授業もなし」でした。
その後、私は大学教授となり、全国で研修を行い、TVにも出演しました。
しかし‥‥《この授業は再現されなかった》のです。
「小林にしかできない」「生徒が良かっただけ」そんな声がつきまといました。
〈再現できなかった理由〉
私は物理学と空手の修行で身につけた〈科学者の視点〉で考えました。
「私の授業の成果は事実」。それなのに、
「再現できないのは〈私の研究方法〉に問題があるのではないか?」と自問自答。
それを探るべく、研修会講師として呼ばれた全国の学校で、
研修会前の〈普段の授業〉を廊下から観察させてもらいました。
すると、数ヶ月で気づいたのです。
それが《成果を出している教師には、共通する〈無意識のスキル〉がある》、でした。
・チャイム前に入室する
・前置きなしに本論に入る
・「えー」「あー」を言わない
・生徒の顔を見て説明する
・説明を短く(10-15分程度)で区切る‥
これらは、私自身も「新しい授業に転換する際に」、〈無意識的に〉整えていたものでした。
これこそが〈授業者スキル〉の原型でした。
〈実験してみたら、学校が変わった〉
いくつかの学校で、教師にこのスキルを意識してもらい、
生徒・教師・組織の変化を測定しました。結果は驚くべきものでした。
・生徒の授業準備が早くなる
・寝る生徒が減る
・授業者の集中力が上がる
・教員同士の会話が増える
・授業が“気持ちよく進む”ようになる
しかも、実験に協力してもらった学校の中には、
「全校的な研修会は一切行っていない」ところもあったのです。
ただ〈スキルを意識しただけ〉なのに大きな変化が起きていたのです。
私は確信しました。《授業者スキルは、教師の成長を〈再現可能〉にする》。
そして学校を変える力を持っている。
〈授業者スキルの構造=「3つのパターン」と「5つのスキル」〉
その「授業者スキル」の構造は「5つのスキル」と「3つのパターン」で要約できます。
今回は提示するだけになりますが、第2回以降、詳述していきます。
感想・質問、大歓迎です。質問にはこの連載の中で回答していきます。
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3つのパターン




5つのスキル





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公開日:
2026/4/7
小林昭文(こばやし あきふみ)
埼玉大学理工学部物理学科卒業。空手のプロとして修行したのち、埼玉県公立高校理科(教諭)として25年間勤務。
定年退職後、産業能率大学経営学部教授(クリティカルシンキング、アクションラーニング(質問会議)等の授業を担当)。
現在は㈱AL&AL研究所代表。
著書「アクティブラーニング入門(小林昭文著/産業能率大学出版部)」他多数。
NHKの教育番組にゲストとして出演経験を持ち、さまざまな学校への指導助言を行う教育界の泰斗の一人
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