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【導入事例】鹿児島修学館・南大都先生に聞くRECOROKU活用法

国際バカロレア認定校が挑む、
映像を活用した「個別最適な学び」の最前線

初めに、前回記事の振り返り:

評価の「時間の壁」と「形骸化の罠」を越える

5/26に公開した記事『「観点別評価」の負担を突破する授業内運用の技術』では、現在の教育現場が直面する深刻な課題について指摘しました。 学習指導要領で求められる生徒の「思考・判断・表現」を見取るための口頭試問などの対策は、教員の「時間の壁(物理的な限界)」を容易に超えてしまいます。かといって、放課後に生徒の申し出に応じて個別にチェックしようとすれば、教員の「授業外労働の負担」が膨らむばかりか、生徒の主体性に依存しすぎることで個人の積極性や要領の良さがそのまま格差となり、結果として「機会の不公平」を生み出す悪循環に陥る危険があります。 

この壁を越えるためには、授業外で1人ずつ対面対応する従来の形から、限られた授業時間の中で「全員が一斉にアウトプットを行い、その記録を蓄積し、お互いの評価に繋げる」という、全く新しい授業スタイルへの転換が必要です。

本稿では、ICTツールを駆使して「教員が1対1の対面面談に縛られる時間の壁」を打ち破ると同時に、生徒同士の「相互の学び合い」を教科ごとに見事に両立させている先進校の具体的な実践事例をご紹介します。お話を伺ったのは、鹿児島修学館中学校・高等学校の南大都先生です。

【修学館の紹介】世界基準の教育プログラムで「一人ひとりにあった学習」を追求


鹿児島市にキャンパスを構える鹿児島修学館中学校・高等学校(以下、修学館)は、国内にわずか22校しか存在しない国際バカロレア(IB)の「中等教育プログラム(MYP)」認定校の一つです。中学1年生から高校1年生までの4年間、生徒たちはこの世界基準の教育プログラムに則り学習を進めています。


MYPが特に重きを置いている指導理念の一つに「差異化した指導」があり、修学館ではこの理念のもと、一人ひとりに合った学習の提供を目指して日々取り組んでいます。さらに、高校2年生および3年生においてはMYPの理念をさらに発展させ、生徒の個性に合わせた個別最適な進路指導を実施しているのが同校の大きな特徴です。


本記事では、この「個別最適な学び」を強力に推し進めるために、同校の南大都先生が動画プラットフォーム「RECOROKU(レコロク)」の各種機能をどのように活用しているのか、具体的な事例を紐解いていきます。

【修学館様のICT教育の特徴・取り組み】ポートフォリオを学びの糧に


修学館は、「学校情報化優良校」の認定を受けており、生徒・教員ともに日常的なICT活用が深く浸透しています。生徒一人ひとりがChromebookを日常的な学習ツールとして活用し、クラウドをベースにしたシームレスな学びを実践しています。

十分な活用スキルが整っているからこそ、修学館では様々な新しい教育手法への挑戦が可能となっています。今後の教育活動において同校がさらに注力しようとしているのが、生徒一人ひとりの学習状況の進捗や日々の活動の蓄積といった「ポートフォリオ」を、日々の学習支援や生徒指導に活かしていくことです。


RECOROKUをどう活用しているか。

5つの活用事例と3つの導入後の変化の紹介

修学館では、高校の理科の授業を中心にRECOROKUを非常に多岐にわたる場面で積極的に活用しています。RECOROKUならではの独自機能が、それぞれの場面で絶大な効果を発揮しています。


活用事例1. 物理の授業

双方向のやり取りが生む、新しい反転授業

南先生は物理の授業において、ご自身で作成した単元ごとの解説動画(1本あたり10分程度)を活用した授業内反転授業を行っています。


動画の視聴は授業前、あるいは授業の冒頭に行いますが、演習時間を最大限に確保するため、基本的には事前に動画を見て知識をインプットしてくる予習スタイルを推奨しています。こうして確保した授業時間の大半を演習に充てることで、生徒同士が教え合う「学び合い」の機会も自然と創出されています。


動画の蓄積は、教員の効率化だけでなく、生徒の学習支援としても多大な効果を発揮しています。欠席時の補習や、授業内容の復習用としても活用できるため、個々の学力やその日の体調、学習状況に合わせて視聴できる環境が整いました。これはまさに、一人ひとりに寄り添った「個別最適な学び」であり、生徒が自ら学びを調整する「自己調整学習者」として成長するための基盤となっています。


また、動画を見ながら文字で双方向のやり取りができる機能(機能③)も活用しています。生徒が動画視聴中に抱いた疑問をコメント欄に書き込むと、先生や他の生徒が返信できるため、時間を合わせることなく空き時間で議論が深まります。


さらに、物理の授業では長期休暇中に身の回りの物理現象を動画にする課題を出したり、定期試験前に生徒自身が問題の解説動画をアップロードして相互に視聴し合う時間を設けるなど、RECOROKUを用いた多角的な学びを実践しています。

導入後の変化①

1日「約1時間」の業務を削減し、個別サポートへ転換

【Before】説明・対応に追われる ➡ 【After】1日約1時間の業務削減

授業準備、欠席者への補習対応、復習時の基本事項の再説明……。これまで教員が都度対応していたこれらの時間が、授業の動画化によって「ほぼゼロ」になりました。 これにより、教員1人あたり1日約1時間の業務量削減を実現。創出された貴重な時間は、授業中における生徒への手厚い演習サポートや、放課後の記述問題の添削、さらには校務分掌など、「教員にしかできない付加価値の高い業務(対人支援)」へと還元されています。


活用事例2. 化学基礎での口頭試問

一斉録画による効率化 

高1の「化学基礎」では口頭試問に活用しています。従来は一人ひとり面談していましたが、RECOROKUを使えば、生徒全員が一斉に自分のPCに向かって解答を説明・録画し、アップロードすることが可能です。 対面面談のように授業が「待ち時間」や「入れ替え時間」などでロスすることがなくなり、教員も後から必要な動画だけを効率よく確認できるため、評価に関わる総時間が劇的に短縮するという絶大なメリットをもたらしています。

導入後の変化②

物理的に困難だった“口頭試問の全員実施”を可能に

【Before】対面で500分(※実質実施困難) ➡ 【After】授業内の20分で完了

50人の生徒に1人10分の口頭試問を対面で行うと、合計500分(約8時間以上)かかります。これは通常の業務内では現実的ではなく、これまで「やりたくても、ほとんどできていない」という課題がありました。 しかし、生徒自身が端末に向かって話す「セルフ撮影方式」に切り替えたことで、授業内のわずか20分間で全員分の試問(アウトプット)を一斉に完了できるようになりました。 教員は後から動画を見て映像上に評価を残しますが、動画という明確なエビデンスが残っているため、その場での対面評価よりも、かえって落ち着いて精緻な評価ができるようになっています。


活用事例3. 生物・科学と人間生活

生徒の動画作成と相互評価 

◆ 生物:「生徒が先生」になる復習動画と模擬授業

 生物の授業では、中学校で習った内容の復習動画をグループで作成する取り組みを行っています。さらに、生徒自身が「教師役」となって模擬授業を行い、その様子を動画に収めてアップロード。アウトプットを前提とすることで、知識の確実な定着と主体的な学びを引き出しています。


◆ 科学と人間生活:数学と融合した、教科横断的な動画作成

 「科学と人間生活」の授業では、数学の知見を取り入れた教科横断的な学びのツールとして映像を導入しています。生徒は、「定常波」の仕組みについて、視覚による「波のできかた」と数式による論理的な記述を織り交ぜて解説する動画を自ら制作。この実践を通じて、感覚的な波の様子を論理的な数式で表現する力を養っています。


◆ 教員の活用:レコロクによる丁寧なフィードバック

 教員側は、これら生徒が作成した動画を評価する際にレコロクを活用しています。動画のどの部分を評価したのか、ピンポイントでコメントを残すことで、生徒の表現力や論理的思考力を多角的に見取るポートフォリオ評価を実践しています。


活用事例4. 高3の進路指導

プライバシーを守る専用チャンネルと深いリフレクション

高3の面接練習やプレゼン練習など、年内入試に向けた指導にもRECOROKUを活用しています。面接というデリケートな練習風景を録画する際、相手ごとの「専用チャンネル」機能(機能⑤)が役立ちます。他の生徒からは見えない個別の専用ページが作れるため、生徒は周りの目を気にせず安心して練習動画を提出できます。自分の面接を映像で客観的に見ることで、生徒の振り返り(リフレクション)は劇的に深まりました。「自分が面接官だったら不合格にすると思う」と冷静に自分を評価する生徒が現れるほど気づきが多く、課題の改善スピードが大きく上がっています。また、これらの動画は貴重な成長記録としても蓄積されています。

導入後の変化③

面接練習1回あたりの振り返り時間を「半減」

【Before】約60分 ➡ 【After】約30分に短縮

これまで、面接練習の振り返りは「教員と生徒が一緒に動画を見ながら指摘する」というスタイルだったため、1回につき1時間近くの拘束時間が発生していました。 RECOROKU導入後は、システム上で教員からのコメント書き込みや、生徒自身のセルフ振り返り(非同期でのやり取り)が可能になったことで、1回の練習にかかる時間を実質半分にまで短縮することができました。


活用事例5. 教員間の業務効率化

会議前の動画共有とコメント機能 

教員間の連携において活用した事例もあります。以前の試みですが、会議での提案事項を事前に動画化し、他の教員にコメントを募る取り組みを行いました。事前に動画を視聴しコメントを共有しておくことで、当日の会議を非常に効率的に進行できるようになりました。

【メインとして効果を表している事例】自動クリップと瞬間コメントが生む「評価の納得感」


数ある活用法の中で、南先生が最も「効果的だ」と感じているのが、教員による生徒への「評価への活用」です。ここにはRECOROKUのコア機能がふんだんに盛り込まれています。


生徒から提出された動画を評価する際、南先生は、

動画の気になる場面をクリックして短い動画を自動作成する機能(機能①)を使います。発表動画の中で「ここが素晴らしい」「ここは事実誤認がある」と感じたシーンをクリックするだけで、難しい編集作業なしにその前後数秒のショート動画が切り出されます。

さらに、動画の「その瞬間」にコメントを残せる機能(機能②)を使い、切り出したそのピンポイントの場面に対して直接アドバイスやメモを書き込みます。


このように「この部分は良い、ここは違う」といった具体的な箇所にタグづけ(瞬間へのコメント)を行っていくことで、生徒自身も「自分のどの発言がどう評価されたのか」が一目瞭然となります。映像という事実に基づいたピンポイントな指導により、評価に対する生徒の「納得感」が飛躍的に高まっているのが最大の効果です。


【ビフォーアフター】「1対1」からの解放と、リンク共有による管理の手軽さ


RECOROKUの導入は、教員の業務に劇的な変化をもたらしました。 前述した化学基礎の口頭試問のように、一人ひとりと面談していくとかなりの時間がかかっていたものが、一斉録画によって大幅に削減されました。


また、動画の管理自体が非常にやりやすくなったことも大きな変化です。RECOROKUはアカウントを持つユーザーしか動画を視聴できない「クローズドなプラットフォーム」となっており、チャンネルごとに共有範囲を細かく絞り込むことが可能です。 これにより、「誰に見せるか」を直感的にすぐ指定できるようになり、設定にかかる時間が削減されただけでなく、外部へのリンク流出といった心配も激減しました。学校現場のセキュリティやプライバシーに徹底して配慮された設計だからこそ、教員が安心して利用できる環境が整いました。 


【今後の展開】一部の授業から学校全体へ、年間を通じたポートフォリオの構築


南先生は今後の展望として、現在の活用をさらに広げ、「年間通して、生徒が活用できるようにしていきたい」と語ります。理科の授業にとどまらず、全校的な探究学習の発表の場や、他教科でのアウトプット活動などへ展開していく計画です。学校全体での利用シーンが広がることで、生徒たちの端末の中には、確かな成長の軌跡としての豊かなポートフォリオが構築されていくことでしょう。


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【まとめ】映像活用システム「RECOROKU(レコロク)」が支える教育現場


修学館の事例で活躍している、RECOROKUの主な5つの機能を改めてまとめます。これらの機能が組み合わさることで、教員の負担を減らしながら、個別最適な学びと納得感のある評価を実現しています。

  • 機能①:動画の気になる場面をクリックするだけで、短い動画が自動で完成

    長い動画の「見せたい場面」でクリックするだけで、その前後数秒間だけの短い動画が自動で作られます。難しい動画編集の作業は一切ありません。

  • 機能②:動画の「その瞬間」に、コメント(文字)を残せる
    作成した短い動画の、まさにその場面(指定した数秒)に対して、ピンポイントで評価やアドバイスを書き込めます。

  • 機能③:動画を見ながら、文字で双方向のやり取りができる
    書き込まれたコメントに対して返信ができるため、時間を合わせる必要はなく、動画をベースにお互いが空いた時間でいつでもメッセージのやり取りができます。

  • 機能④:動画の活用(ハイライトの作成とリンク共有)
    いくつか作った短い動画から必要なものだけを集めて1つの「ハイライト動画」にまとめられます。共有用のURL(リンク)を伝えるだけで、手軽に共有可能です。

  • 機能⑤:相手ごとの「専用チャンネル(ページ)」で、プライバシーを守れて安心
    やり取りをする相手ごとに、他の人からは見えない個別の専用ページを作れます。周りの目を気にせず、安心して映像(面接練習など)のやり取りが可能です。

鹿児島修学館におけるRECOROKUの活用は、テクノロジーの力を活用して「教員の働き方改革(業務効率化)」と「質の高い個別最適な学び」を高い次元で両立させた、次世代の学校モデルと言えるでしょう。


【取材を終えて】 今回、鹿児島修学館様、そして南先生の取材を通じて強く感じたのは、多忙を極める教育現場において「生徒一人ひとりの学びを決して諦めない」という熱い情熱と先進的なお姿でした。国際バカロレア認定校として、生徒の多様な個性を引き出す「差異化した指導」の実践は、一朝一夕でできるものではありません。それを、ICTという現代の武器を前向きに、精度高く使いこなすことで、授業と業務の双方でブレイクスルーを起こされている鹿児島修学館中学校・高等学校の取り組みに、心からの敬意を表します。

そして、先生が日々注がれる情熱と、これまでは捉えづらかった生徒の皆さんの「成長のプロセス」を映像によって鮮やかに可視化し、それを支える伴走者として弊社の『RECOROKU』が役割を果たせていることに、この上ない喜びと深い感謝を申し上げます。

(萩原 | MichibiQ 編集長)




萩原 達也(はぎわら たつや)

プロ野球審判員という極めて異色のキャリアから、教育業界最大手Benesse(ベネッセ)ホールディングスグループ企業へ。
厳格なジャッジが求められる現場から、日本の教育を牽引する巨大組織での実務へと身を転じた経験から、教育業界における広範な知見と深い洞察を培う。現在はIT企業に籍を置き、テクノロジーを軸とした教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に従事。
現場で磨いた独自の視点と、Benesseで得た教育の真髄、そしてITによる変革力を掛け合わせ、固定観念にとらわれない「教育界のアップデート」を提言する。